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世界最大級の食品製造総合展「FOOMA JAPAN 2025」で電気エネルギーシステム工学科 藤田萩乃研究室が「FOOMA AP賞グランプリ」を受賞。新たな食品用高効率マイクロ波加熱装置の開発で
世界最大級の食品製造総合展「FOOMA JAPAN 2025(FOOD PROCESSING TECHNOLOGY EXPO)」(主催:一般社団法人 日本食品機械工業会)が6月10日(火)から13日(金)の4日間、東京ビッグサイトで開催され、「アカデミックプラザ」で発表を行った43の研究室の中から、電気エネルギーシステム工学科 藤田萩乃研究室の「食品加熱に好適!楕円型チャンバによる高効率マイクロ波加熱装置の開発」がFOOMA AP(アカデミックプラザ)賞グランプリを受賞しました。
FOOMA AP(アカデミックプラザ)賞について
「アカデミックプラザ」は各大学?研究機関が発表する最先端の研究を発表する場で、毎年、産?学?官で共同研究の契機となっています。
FOOMA AP(アカデミックプラザ)賞は、食品産業の技術革新と研究開発を促進するために設けられた賞です。アカデミックプラザでポスターセッションにより発表された研究の中から、業界の進歩と新たな食品開発に貢献する優れた研究を選出し、賞が授与されます。
選考には一般社団法人 日本食品機械工業会技術委員、アカデミックプラザの来場者(主として企業人)、参加研究室の各代表による投票結果を基に、獲得ポイントが多かった発表(複数可)に対して授与され、 発表は、会期3日目(6月12日)の「AP交流会」において行われました。
グランプリを含む各賞の受賞者は以下のサイトで紹介されています。
https://www.foomajapan.jp/academic/award/
FOOMA AP賞グランプリを受賞した藤田萩乃研究室の
「食品加熱に好適!楕円型チャンバによる高効率マイクロ波加熱装置の開発」の概要
一般に電波伝搬において、送信機Txから放射された電磁波をRxで受信するとき、Fig.1に示すようなTx、Rxの位置を焦点とするフレネルゾーンと呼ばれる回転楕円体を経由してTxからRxに到達した電磁波の位相は等しくなる。電磁波はTx-Rx間を最短経路d_0で伝搬する波と、d_1+d_2のように楕円体を経由した経路を伝搬する最短経路との差が半波長以内の波が強め合い、最終的にRx地点に集約され受信される(式1)。電磁波は最短距離を直進する波ばかりではなく、フレネルゾーンの中を自由に伝搬して、受信地点で重畳される。
本研究ではこのフレネルゾーンを加熱チャンバとして再設計し、新たなマイクロ波加熱の方法を提示する。
式(1)を満たす楕円の焦点位置にモノポールアンテナを設置し、一方のアンテナから2.45GHz のマイクロ波100Wを放射し、もう一方のアンテナで受信したときの電界分布のシミュレーション結果をFig. 2に示す。どちらの楕円でも送信アンテナから受信アンテナへ電界が集中していることがわかる。
Fig. 2(a)の装置を製作し、市販の電子レンジと加熱試験を実施した。昇温特性をFig.3に示す。どちらも100W出力とし、φ30 mmのプラスチック製試験管に25 gの水を入れて加熱した。電子レンジでは、庫内の中央部に試験管を立てて設置した。その結果、本装置では入力電力に対する加熱効率が69.2%だったのに対し、電子レンジでは16.9 %であった。
近年のマイクロ波加熱装置はバッチ式が主流であるが、本装置は楕円の焦点を通過するように配管を設置してインラインで加熱ができる今までにない新しい装置である。従来の方法でインライン装置にする場合は、マイクロ波の漏洩を低減する大掛かりなシールド装置を必要としたが、本装置はチャンバ内で加熱が完結するため装置がコンパクトになるという利点がある。
食品加工の現場では流動性のある食品の加熱に適用できるため、エクストルーダーのような高圧加熱射出成形機に取り付け、スナック菓子、麺類、シリアル食品等の汎用的に利用できる。また食品用途だけでなく、被加熱物の反応促進や溶融等、あらゆる加熱プラントに設置でき、減圧?加圧工程内でも利用可能である。
(FOOMA AP賞グランプリ受賞ページ https://www.foomajapan.jp/academic/5/ より)
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